シルエットの先で待っている猫。11年前に出会ったうちのキキのこと

目次

ちょっぴり不器用だけど、まっすぐな愛をくれる猫と静かで優しい日常

11年前に出会った1匹の猫、キキ。

ちいさな命を迎えたときのこと、家族の中で育まれていった絆、

そして今も変わらず、私の心に寄り添い続けてくれる存在としてのキキとの日々を、

丁寧に振り返ってみました。

猫と暮らしている人も、そうでない人にも、あたたかな何かが届いたら嬉しいです。



キキとの出会いは、ぽっかりと空いた春の午後に

キキと出会ったのは、今から11年前の5月。

ぽかぽかとした陽気に包まれていたけれど、私の心にはどこかぽっかりと穴が空いていました。

その年、娘は東京の大学3年生、息子は大学進学で金沢の国立大学へ。

毎朝作っていたお弁当もひとつ減り、夕飯の量も少し控えめに。

「これが“子離れ”ってことなのかな」と思いながら、少しずつ暮らしの形が変わっていくのを感じていました。

そんなある日、児童館に段ボールごと捨てられていた4匹の子猫の話を耳にしました。

「かわいそうだな…」とは思ったけれど、うちにはすでに猫が3匹。

夫も「これ以上は難しいよ」と言っていたし、正直、私もその通りだと思っていました。

だけど、「今日の午後3時までに引き取り手がなければ、保健所に連れていかれる」と聞いた瞬間――

心の中のスイッチがカチッと入ったような気がしたんです。

「せめて1匹だけでも助けてあげたい」

そんな思いで、午後の仕事の合間に児童館へと駆けつけました。

でも――時すでに遅し。

小さな命たちは、すでに保健所に引き取られたあとでした。

「どうしてもう少し早く動かなかったんだろう」

「今ごろ、どこにいるんだろう」

「まさか、もう処分されてしまうなんてことは…」

不安でたまらない気持ちのまま、家に帰り、夫にすぐ相談しました。

「とにかく行ってみよう」

そう言ってくれた彼の一言に背中を押され、夕方の保健所へ向かいました。

けれど、あいにくその日は金曜日。

動物担当の方はすでに退勤しており、対応できるのは週明けの月曜日になるとのこと。

土日を待つしかない現実に、胸が張り裂けそうでした。

テレビを見ていても、ご飯を作っていても、

頭の中ではずっと、あの子たちのことばかり。

「どうか、無事でいて」

それだけを祈りながら過ごした週末でした。



「助けたい」気持ちだけじゃ、どうにもできなかった週末

週が明け、ようやく迎えた月曜日。

朝から気が気じゃなくて、出勤しても仕事に集中できませんでした。

「一緒に行こうか?」

そう声をかけてくれた職場の同僚と一緒に、再び保健所を訪れました。

案内されたのは、重くて黒い鉄の扉の奥――

まるで倉庫のような、光の届かない、ひんやりとした場所。

その中に、小さなケージが並び、

キキたちは静かに、身を寄せ合うようにしてそこにいました。

「ミャ…」

かすかに聞こえた声は、誰かを呼ぶようでもあり、諦めかけているようでもありました。

胸がギュッと締め付けられるような思いで、私はケージの前にしゃがみ込みました。

そしてその中から、まだほんの赤ちゃんのような茶トラの子猫を、そっと見つめました。

保健所の方も、命を託すにあたっては慎重です。

「今猫を飼っているか?」「家族構成は?」「飼育環境は整っているか?」

いくつかの質問に答えながら、

“この人なら大丈夫だ”と、私という人間を見極めてくれているのが伝わってきました。

そして、無事に譲渡が決まり――

私はその茶トラの子猫を、そっと胸に抱きしめました。

温かくて、小さくて、少し震えていて――

でも確かに、命の重みを感じるその瞬間。

「あなたはもうひとりじゃないよ」って、心の中でそっと語りかけました。

ちなみに、一緒に来てくれた同僚がもう1匹を迎えてくれて、

数日後には、残る2匹も別の同僚たちが引き取ってくれました。

あの時、段ボールに入って捨てられていた4匹の兄弟たちは、

奇跡のように、みんな家族を見つけたのです。



名前の候補はたくさんあった。でも、この子にはやっぱり“キキ”だった。

新しい家族として迎えたこの小さな茶トラの女の子に、

どんな名前をつけようか――それは嬉しくも悩ましい時間でした。

うちの猫たちには、ずっと“ジブリ作品”から名前をつけてきました。

最初の猫は『となりのトトロ』の“めい”。

次は『魔女の宅急便』の“じじ”。

その次が『天空の城ラピュタ』の“シータ”。

ちょっと番外編で“ねず”という子もいたけれど(笑)、

自然と「次もジブリから」と思っていました。

「サンはどうかな?ナウシカも好きだけど…」

いろいろ名前を考えたけれど、

この子を見て真っ先に思い浮かんだのが『魔女の宅急便』の“キキ”。

まだ頼りなくて、でも芯の強さを感じるようなその瞳。

どこかおっちょこちょいで、不器用だけど真っ直ぐな雰囲気が、映画のキキと重なって見えたんです。

「キキ」――その名前を口にしたとき、

不思議とすぐに馴染んで、

この子も私たちの家族の一員なんだなぁって、実感しました。



深夜の玄関に響いた、幸せの“ミャー”

その日の夜、娘が東京の大学から帰宅したのは、夜の12時前でした。

サークル活動で帰りが遅く、電車の時間もギリギリ。

しかも、普段から「なんで東京の大学に通うことにしたんだろ…。一人暮らしさせてほしい。」なんて不満を漏らしていた彼女は、

その日も相当お疲れモード。顔にも思いっきり“機嫌悪い”って書いてあるような帰宅でした。

ところが――

玄関を開けた瞬間、静かな家の中に響いた、聞き慣れない“ミャー”という小さな鳴き声。

次の瞬間、彼女の顔がパッと変わったんです。

「え?え?えぇーーー!?なにこの子!かわいいー!!!」

と、さっきまでの不機嫌はどこへやら、声までワントーン高くなって(笑)

そのままキキを抱っこして、「この子がうちの新入り!?やばい、癒される…!」とデレデレ。

きっとあのとき、娘の心にあった疲れや不安も、

キキの存在がふわっとほどいてくれたんだと思います。

たったひとつの“ミャー”で、人の心を明るくする。

キキは、我が家にとってそんな“魔法”みたいな存在でした。



キキの性格は、ツンじゃない。“全力デレ”です。

猫というと、気まぐれでツンツンしているイメージがあるかもしれません。

でもうちのキキは、そんな定番イメージとはちょっと違います。

彼女は、もう本当に…“全力デレ”。

とにかく私のことが大好きで、いつもどこでも後をついてきます。

お風呂に入ると、扉の前にちょこんと座って待っている。

夜寝るときも、布団に入る私の枕元にぴったり寄り添って眠る。

トイレに立ってもキッチンに行っても、「どこ行くの?わたしも行くよ!」と、トコトコついてくる。

まるで小さな影のように、いつも私のそばにいてくれるキキ。

ちょっと席を外しただけでも、「ミャァ…」と声を出して探しに来てくれる姿に、

「この子は、本当に私を必要としてくれてるんだな」と感じます。

家族にとって“猫”でありながら、

私にとっては“娘のような存在”。

キキは、そんな特別な子です。



そして、朝はキキの“肉球目覚まし”から

キキの一日は、だいたい朝の5時半〜6時頃にスタート。

私の目覚ましよりも正確な“肉球アラーム”で起こしてくれます(笑)

布団の中でまだぬくぬくしていると、

枕元にちょんちょん、と柔らかい感触が。

「起きて〜ごはんの時間だよ〜」という声が聞こえてくるような、

優しいお誘い――のはずが、

爪が伸びている時期だと、チョンチョン+ツメという「痛めの愛情表現」にグレードアップ。

「いったたた…!でも、かわいい……!」

寝ぼけた頭で、そんな矛盾した感情に包まれる毎朝です(笑)



“大好き”なのに一緒にいられない。キキの切ないリビング待機。

キキは、私のことが大好きです。

どこに行くにもついてきたいし、できればずっと同じ空間にいたい。

でも、ひとつだけ、思うようにいかない場所があります。

それが――リビング。

うちにはもうひとりの家族、ジャックラッセルテリアの“ジャック”がいて、

リビングは基本的にジャックの居場所。

ジャックはキキのことが気になりすぎて、見つけるとすぐにワンワン!

テンションが高すぎるアプローチに、キキはすっかり引いてしまい、

リビングには近づかなくなってしまいました。

それでもキキは、私のそばにいたい。

だから彼女は、リビングのドアの向こう――

すりガラス越しに、じっと静かに“シルエットだけの状態”で待ち続けるんです。

小さな影が、扉の向こうにじっと佇んでいるのが見えると、

「ごめんね」「あとでちゃんと抱っこするからね」って、思わず声をかけたくなる。

好きなのに、近づけない。

気になるのに、怖くて近寄れない。

そんな不器用なふたりの関係に、

思わず胸がキュッと締めつけられる日もあります。



見てないところで、こっそり探検。キキの“ツンデレ潜入作戦”。

リビングには入れない――でも、気になって仕方ない相手。

そう、それがジャック。

キキは普段、ジャックの前では「フンッ」て感じでそっけなく通りすぎるくせに、

実は、誰も見ていないときにとんでもない行動に出ていました。

ある日、娘が久しぶりに帰省したときのこと。

家にいる間、ふと目にした光景をこう言いました。

「ママ、あのね……キキ、ジャックのケージに入ってたよ。」

「えぇっ!?キキが!?まさか!」

とびっくりしたけれど、よく考えてみたら、心当たりがありました。

ジャックの散歩から帰ってくると、

なぜかキキの体から、ほんのりジャックのにおいがする日があって…。

あれは気のせいじゃなかったんだ――

キキ、こっそりジャックのケージに入って“調査”してたんだ!

ジャックがいない間を見計らって、

ケージの中をウロウロ、クンクン…

「ふーん、ここで寝てるんだ」なんて思ってたのかもしれません。

普段はツンとしてるくせに、

こっそり背中を見せないところでちゃんと“気にしてる”。

それがもう、可愛くて、切なくて、なんだかちょっと笑えるんです。



キキがいてくれて、本当によかった。

あの日、児童館で保健所に連れていかれたと聞いて、

どうしても放っておけなかったあの小さな命。

あの時動いた自分を、今でも誇りに思っています。

なぜなら、あの日選んだ“キキ”が、私にたくさんの幸せをくれたからです。

キキは、私のそばにいるのが大好きで、

どこへ行くにもついてきてくれる。

朝はちょっと痛いけど(笑)優しいツメ付きモーニングコールで起こしてくれて、

夜はぴったりくっついて眠ってくれる。

リビングに入れないときは、扉の向こうでシルエットだけで待ち続けるその姿が、

言葉なんていらないほど、愛おしくて切なくて――

「この子は、私を信じてくれてるんだな」って、毎日思わせてくれます。

ジャックとの関係はちょっと不器用で、

近づきたいのに近づけなくて、吠えられては避けて。

でも誰も見ていないところでは、

こっそりケージに入ってジャックのことを“調査”してる。

ツンとして見せながら、

実は誰よりもやさしくて、あたたかくて、賢くて――

キキはそんな子です。

この11年、キキと一緒に過ごした時間は、

楽しいことも、悲しいことも、全部まるごと、優しい記憶に変えてくれました。

もしもまた人生をやり直せたとしても、

私はきっと、もう一度“キキ”を迎える選択をします。

キキ、うちに来てくれて本当にありがとう。

あなたがそばにいてくれるだけで、私はきっと、これからも大丈夫。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

キキとの暮らしが、誰かの心に少しでもやさしい風を届けられたら嬉しいです。

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この記事を書いた人

はじめまして。mina(ミナ)と申します。
アラフィフ、57歳。猫と犬と一緒に、のんびり一人暮らしをしています。

普段は会社員として働きながら、
ボーナスほぼゼロの収入を支えるため、副業でファミレスのバイトもしています。

趣味は、たまに出かける小さな旅行。
そして何より、家で猫や犬とまったり過ごす時間が、私にとっての一番の幸せです。

このブログを始めたきっかけは、
老後がすぐそこに見えてきた今、
「このままで大丈夫かな」と不安を感じる自分自身を励ましたかったから。
そして、同じように感じている誰かの小さな勇気になれたら、と思ったからです。

ブログでは、
節約や副業のこと、心屋で学んだことを活かしたちょっとしたお悩み解決、
ペットとの暮らし、日々の小さな幸せについて、こつこつ発信していきます。

老後が近くても、一人でも、
こつこつ積み重ねたらきっと大丈夫。
私のリアルな暮らしが、少しでも誰かの励ましになりますように。

どうぞ、よろしくお願いします。

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